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Sometimes

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2008年 01月 02日

飼い主の前では…

長年一緒に暮らした犬(ジン)が行方不明になって、そろそろ半年。
最近、読んだ本「鬼の宿帖」に、「犬は飼い主の前では死なぬ」
という諺があることを知った。猫が死体を見せないという話は
よく聞いていたけど、犬にもそんな本能があるとは、知らなかった。

本のタイトルにある宿は、本郷、菊富士ホテル。
宿の鬼たちとは、そこに下宿していた文士や画家、思想家、科学者、
政治家、役者、映画監督のこと。たとえば、大杉栄、伊藤野枝、
竹久夢二、坂口安吾、溝口健二、直木三十五、高田保、谷崎潤一郎、
広津和郎などだ。
この人たちの素顔を知りたくて、購入した。特に高田保が気になって。

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著者の羽根田武夫さんは、小学校5年生のとき、飼っていた老犬が
行方不明になり、ついにその死骸を見ることがなかったという。
その犬は忠犬ハチ公のように、毎日学校の校門まで羽根田さんを送っていき、
授業が終わるまでそこで待っていたので、学校じゅうの評判になった。
「クロは醜い死体を私に見せるのが嫌で、こっそり死に場所を求めて去った
に違いない。その気持ちを思うと、今でも熱いものがこみあげてくる」
と書いている。

最近、いろいろな人の話を聞いてわかったことがある。
15歳を過ぎた老犬がいなくなるケースが意外に多いことだった。
「老犬だから、自分で帰れなくなったのよ」と言う人もいたけれど、
「死に場所を探して、絶対に見つからないような所まで行ってしまった」と
とらえる飼い主が多かった。
ある人は「どこにも行かないで、ここで死ぬんだよ、と言い聞かせておかなきゃ
だめ」と言っていた。その人の犬も、行方がわからなくなったので、
あちこち探し回り、後悔もしたようだ。「言っておけば良かった」と。

ジンは18才になる1ヶ月前にいなくなったので、つい「認知症かも」
と思ってしまった。けれど、もし死に場所を求めて力をふりしぼって
遠くへ遠くへと行ってしまったのだとしたら、ごめんね、
わかってあげられなくて、と謝りたい気持ちになってくる。

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「作家の猫」という本にも、面白いことが書いてあった。
中島らもは、老衰が激しくなってきた猫に「どこにもいくな、死ぬんだったら
この机の下で死になさいね」と何度か語りかけていたという。
「猫は死期を悟ると、フラリと出ていったりするじゃないですか、それがイヤで。
そうしたら、ある朝起きたら、本当に机の下でひっそりと息を引き取っていたんです。
わかったんですねぇ」(中島らも夫人の話)

気持ちが通じるんですねぇ。

「鬼の宿帖」の羽根田武夫さんは93歳のユニークな生涯を終えている。↓
http://www.fujiseiyaku.co.jp/haneda.htm

従兄弟の羽根田弥太さんは、発光生物の研究では国際的に知られる研究者で、
岐阜県平町出身。八丈島には光るキノコなどの研究で何度か来ています。

http://www.geocities.jp/zenhoken/ZHJ_pdf21-30/ZHJ28_08-10.pdf



南海タイムス新年号に掲載された次の作品をご紹介します。

村田乃撫子さんの組木絵「八丈島の家」です。↓
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松村潤之介さんの版画です。↓
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松村潤之介さんの作品展が最近、旧日光街道・千住宿の蔵ギャラリーで開催されました。
その会場の写真です。↓

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犬が飼い主に願うことを列挙した、作者不詳の短篇詩「犬の十戒」。
いま、世界中で静かなブームを呼んでいるそうです。
ちょっと泣けてしまいます。↓

1.私と気長につきあってください。
2.私を信じてください。それだけで私は幸せです。
3.私にも心があることを忘れないでください。
4.言うことをきかないときは理由があります。
5.私にたくさん話しかけてください。人のことばは話せないけど、わかっています。
6.私をたたかないで。本気になったら私のほうが強いことを忘れないで。
7.私が年を取っても、仲良くしてください。
8.私は十年くらいしか生きられません。だからできるだけ私と一緒にいてください。
9.あなたには学校もあるし友だちもいます。でも私にはあなたしかいません。
10.私が死ぬとき、お願いです、そばにいてください。どうか覚えていてください、私がずっとあなたを愛していたことを。

by some-times | 2008-01-02 13:57 | 情報


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